貞享元年11月、1684年、芭蕉41歳。 「野ざらし紀行」の旅の途中の吟。ここでは竹斎が何ものなのかわからないと、さっぱりわからんい。竹斎は江戸時代初期の仮名草子「竹斎」の主人公で、藪医者で、頓智で病を治し、狂歌で名声を博したという。 その格好は乞食同然ださうだ。 芭蕉はその竹斎を「侘びつくしたるわび人」 としている。「侘び」はむずかしい。「飾りやおごりを捨てた、ひっそりとした枯淡な味わい」とされるが、こころざしが破れたわびしさを受け止め、その人の心中に時代や社会的名声や地位を超えた価値を見出そうとする境地、という意味があるようだ。極限まで削ぎ落とされた世界から無限を感じる美意識、物が無いことは「貧しい」状態ではなく、「美しい」という高い次元の精神のあり方。芭蕉は竹斎に、時流の社会の価値観に囚われることない竹斎的世界をみているのだろうか。 木枯らしが吹きすさぶなか、笠は長旅の雨で朽ち、外套もぼろぼろの姿で竹斎がやってきた。いやそれは私の姿なのだと、芭蕉はいう。「侘びつくしたるわび人」、それは狂句、風狂に生きる芭蕉の心意気である。 |